ないことも あるかごときに 言い張りて 「認知」の君の メタバスの世界



           (あるホテルのバーで飲んでいた時、バーテン
            ダーが何にしましょうか?言い淀んでいると、 
            いつも何を飲まれてますか?恥ずかしかったが
            「明石」です。それならこれはいかがですか、と
            出してきたのが、これ。素直で芳醇であった。
            最近は入手できていない。)


  引きこもり状態にある友人の家族から頼まれて、月に1、2度見舞うようになって、半年が過ぎた。この間概ね二人でウイスキーを飲んできた。会話は比較的スムーズだが、時たま信じられないような事態になる。2年半前の遭難のことに話が及ぶとそれは何のことという表情を示す。遭難事件の直後共通の友人が亡くなったが、そのことに関しても、また「あいつ死んだのか?」と言い出す。ともかくここ数年の記憶が完全に欠落している。家族によれば、数時間前にあったことでさえ、全く覚えていないという。

 話が転じて、最近では、たまに鉢伏山から旗振山を経て高倉台に下るという話や菊水山、鍋蓋山の急坂をこなしてきたという話をしだす。

 足大丈夫なの?という合いの手を入れながら聞き流す。多少真偽怪しい部分が残る。ただ万が一のこともあり、この話を家族に伝えた。山中で戻れなくなったら遭難事件の二の舞になる。

 家族の返事は次のようものだった。「山歩きなど一切していない。昔の記憶を使って適当に話している。受け答えが普通で、相手はてっきりまともだと錯覚する。それで却って困ることもある。」

 

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