無垢にして ものも見通し 情知る かくなる人の ツードゥ オア ノット

 

                  マツバギク


 作ってしばらくして改めて見てみると何をいってるのかわからないことがある。まさに散文ではない、字句の寄せ集めだから仕方がないと言えば仕方がない。でもしばらく眺めていると朧げながら浮かび上がってくるものもある。

 「無垢」と言えばムイシュキンだろう。ドストエフスキーの長編「白痴」の主人公だ。混乱し荒んだ社会に純真無垢の人を置いたらどうなるだろうか、と言う発想のもとに作られた小説だ。

 主人公はともかく置かれた社会は現状とあまり変わりがないのではとつい思ってしまった。侵略地から物資を奪って自宅に送る兵士、女子を陵辱して恥じない兵士、75年前に起こった日本人被害の事件と寸分違わないことが、今の世界でまた繰り返されてしまった。

 ドストエフスキーは、実態を見抜いていたのではないか、ただ絶望はしなかった。白痴と呼ばれたムイシュキンもまた彼の地では少なくない存在なのだ。

 離れた地の人との相互理解はいつもいつも難しい。


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