ムイシュキン かもしれないと 呟(つぶや)いた ドラマ仕立ての あのキャンパス




                  コブシ


 半世紀前の大学は何でもありの無法地帯だった。過激派学生組織の中堅幹部が、大学にあじりにくる。単純な内容で、聞いていてもおかしくなる。その時の言葉は、「お前らはスーパーマンだ。」その言葉に触発されて、反対派学生が角材で頭を殴られて出血っていう具合。刑事事件として扱われたと聞いたことがない。殴られる学生組織は決まっていて、反撃したことは多分ない。ある時、大阪空港近辺にある軍需産業目指してデモをかけるという名目で、近辺の大学に過激派学生が集結したことがあった。当の大学からすれば、得体の知れない他大学の学生が大勢集まってくることに。その意を受けたのか受けてないのか定かでないが、一般学生と称する学生たちがこれも集結して、進駐してきた学生を追い出そうとする。真夜中進駐してきた学生たちが大講堂に集まり、その周りを一般学生と称する一団が何重にも取り囲み、一晩中「出ていけ」のシュプレヒコールを繰り返す。このように記述すると結構緊迫した雰囲気が漂う。

 出入り口はどうなっているのか興味が湧く。完全に封鎖されているのか?

 その心は、甲子園球場で開催されるプロ野球のイニング8回の出入り口と解く。プロ野球ではもちろんチケットがなければ入れないから出入り口には監視人がいる。しかしイニング数が後半に入ると、その頃に来る客なんていないとして、監視人は立ち去り、入出場フリーになるのだ。つまりこの場合も入出場は自由なのだ。だから出たり入ったりしている人物もいる。その近辺は、シュプレヒコール舞う所と違って、楽屋裏という雰囲気で、屋台なんか出ていてもおかしくはない。

 中はどんな雰囲気かというと、結構普通なのだ。本来なら中にいる人数の何倍かの人間が集まって、大声を張り上げているわけだ。実力で踏み込まれたらどうなる?とは誰も考えない。何せ囲ってるのは良識ある一般学生で実力行使はないと踏んでいるわけ。それでも長時間囲まれると意気も下がってくる。そこで時折特攻隊の募集がある。囲みに向かって4列縦隊で突撃するのだ。多分お祭りの神輿のぶつかり合いに似ている。

 こんなことがいろいろあって、ある時機動隊が学内に進駐した。学内は催涙ガスで霞んでいた。それまでの秩序が粉々に砕かれた。偉い学長さんが馬鹿者呼ばわりされ、そこらへんの教授も何の権威も持たなくなった。これらの過程で、既成の秩序の脆弱性を認識した者も、逆に底知れぬ力を感じた者もいた。ただ対峙した者は共通してその力を実感した。それだけが財産だ。



                  

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