鳥の立つ 藪踏み入れば ザワッと 意図構わず 侵入者
「シリウスの道」は何箇所か泣かせてくれる。主人公の副部長が社内政争に巻き込まれて地方転勤が画策された。転勤を受け入れるか辞表を叩きつけるかとの岐路に立った時、動いたのは副部長を慕う新入社員だった。その父親は有力閣僚だったが、父を動かして当該企業の社長に理不尽さを訴えたのだ。人事案は撤回された。権力を使うこと、阿ること、甘えること。それらに強烈な拒否反応を示す副部長や新入社員にとっては、思わぬ展開となってしまったが、新入社員の切なる心情が文面に染み渡ることになった。
かような例はこの小説にいくつも出てくる。ハードボイルドなのだ。大勢に流されず、自らの流儀をひたすら守る。金銭に綺麗で女性に淡白。真は正義感だ。世の中にないものばかりを集めたようだ。
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