音轟き 遺骸散らばる 蝉の道 忙しなき音 追いかける音

    

 木々の中を歩いていると、前からも後ろからも首筋にも手にも、蝉が飛びながら当たってくる。セミも多分驚いているように見える。適当に飛んでいたら障害物に当たってしまったという感じ。木に止まっているセミに帽子を被せてみると、敏捷とは言えないが、それでもなんとか抜け道を探して窮地を脱している。蝉は死ぬ時多分なんの予兆も感じていないようだ。よく歩道の上で仰向けになって死んでいる。あらかじめわかっていたらもっと適当な場所を選んでいたろうに。

 それにしても蝉は地上に出てから1ヶ月前後生きるという中学生の観察記録は秀逸だった。あんなに長い間地中で苦労し、たった7日間しか地上で自らを謳歌できないなんて、儚さの象徴だ、なんて趣旨の俳句短歌が山のようにあるかも。凡庸さの山盛りだ。7日も1ヶ月も短いことに変わりない、という反論が聞こえてきそうだが、恥の上塗りだな。笑われたのは、確かめもせず大事な心象を託したこと。

 

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