製作の過程

 

 毎日短歌を作っている。その過程は当初と今では大幅に変わった。当初はともかく添削に添削を重ねる常で、結局最初のものとは何もかも違うということもあったものだ。今はサッと詠んでほとんど手を入れないことが多い。面倒を避けたいという気持ちもある。

 正直に言えば、手の入れすぎは良くないが、入れるべき手は通常あると思われる。

 そこでありきたりな製作の過程を述べてみたい。


 腐葉土の森、肩に枝が触れるたびに紅葉が落ちていく。こんな経験をして、ふと浮かんだ句が「肩触れる その度落つる」でその後すぐ出来た1首がこれである。

    肩触れる その度落つる 儚さよ 紅葉の森 季節移ろう

 最終句がなかなか出てこなくて、ありきたりな「季節移ろう」で誤魔化した。

 その後、ここを「寒々しい」や「かくありたげや」に変えてみたがしっくりこない。

 そうするうちにここまで行き詰まるのは、第3句の「儚さや」にあるのではと思い付いた。つまり、肩に触れその都度落ちる、そうなるときっと儚いだろうという常套的に考えたのではないかと。

 そこでそこを現実にあった「音のして」に変えた。そしてそこまで事実に即応すると最終句やはり事実に基づいたほうがいいという判断に至った。まあ決め言葉に窮したということ。

 そこで出来たのが次の1首。

    肩触れる その度落つる 音のして 紅葉の森 踏み踏み締め

 事実だけの1首になった。景色が大幅に変わった。


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