モーツァルトのピアノコンチェルトといえば、20番から27番を思い浮かべ、果たしてその中で一番はどれかを決めてやろうと是非もない試みに挑んだ人も少ないわけではない。そして聴くたびにその聴いている曲が一番だと思うことになり、この試み自体の無益さを思い知るのである。 そしてふとしたきっかけで疑問が生まれた。これらの絶対的とも言える名曲が演奏会で演じられることはなぜかくのように少ないのだろうかと。するとまず思い浮かぶのは、評価はそれほど高くないのでは、と言う考えだった。 5番から27番を毎日のように聞いていると、あることに気がついた。20番以降は他と異なる。10番代は素朴で淡々としているのに、20番以降は派手で大仰で、感動的で、感傷的だ。観客を想定して、その観客の関心を買おうとしている。そしてその観客と私たちが重なり、名曲と評価されている。作曲家が自らのために作ったのは、10番代以前だろう。 走れば 見える聞こえる 考える 過去に通じる タイムトンネル